2023-01-29 鎮魂のうた 庭の焼場にひねもす煙絶えず草を供えて合掌をしき 病院の敷地の一隅に、焼場があった。病院で死亡した人はそこで焼かれた。 山西に作戦がつづくと、傷兵が、トラックで運ばれてきたが、死者もふえて、焼場に運ばれた。 供えたくとも、一茎の花もなくやむを得ず、近くのたでに似た草を束ねて、焼場に供えた。 ふるさとであれば、肉親にかこまれて、別れの儀式が営まれるであろうが、黄土戦野の一画なので、殺風景なものであった。 手を合わせるのは、二名の看護婦だけ。 ことば少なに、煙の行方を見守った。 そして骨は、白木の箱に納められ、それぞれ、故郷に、無言の帰還をした。 花田ミキ「鎮魂のうた」19-20p readyfor.jp