2023-03-07から1日間の記事一覧

八月の面影

火祭りの灯影にうかぶ面影は勝つと信じて死にし若きら八月の青森の夜は、ネブタをとりまいて、老若男女が怒涛のように踊り狂う。短い夏に、北国の情熱を爆発させるかのようである。ゆらめくネブタの灯影に、私は、幻を見る。それは、かつての戦争のとき看護…

遺されし子ら

突然、埼玉のNさんから、手紙をいただいたのは、一昨年のことであった。私が戦時中に勤務していた、さいべりあ丸に、父上が船長として乗船していたが、昭和十九年(一九四四)夏に、爆撃を受け、船と運命を共にしたという。長く、戦没の場所も月日もわから…