もう一度戦場へ

治癒した兵士が再び戦地へ送られる矛盾への苦悩から、花田ミキさんは戦争に対して強い怒りを抱きます。

昭和18年に発行された『病院船從軍記』(主婦之友社)の89-90ページには負傷した兵士が病院船に乗り、日本についたとき、司令官代理がまた「働いてもらう」とスピーチをされた話が掲載されています。

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船が停まると、間もなく、司令官代理が(司令官は第一線に出動中なので)お迎へに見えた。船内放送で、歸還の勇士達に、歡迎の挨拶があつた。

『南方戰線の勇士諸君をお迎へして、御挨拶をいたします。この度の南方における戰闘は、まことに世界戰史に比類のないもので、一千百粁を五十五日、一日五里という長さでありまして、その間諸君は、幾多の激戰を經られたのでありました。謹んで感謝の意を表します。
 不幸敵彈の見舞ふところとなり、諸君は本日御歸還になることになつたのですが、諸君の戰友のなかには、すでに無言の凱旋をしてをられる方もあるなかで、幸ひにして諸君は、療養次第で再び戰線に歸れるのであります。この度の戦爭は、まだまだつづきさうに思はれますので、諸君は、よく醫官の注意を守り、一日も早く恢復の上、ぜひもう一度働いてもらはねばなりません。』

昭和18年2月1日印刷、昭和18年2月5日發行 病院船從軍記 主婦之友社

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