誕生日の夜

昭和十二年の九月九日。つとめ先の赤十字支社のつとめを終わってから、新町の不二家で夕食をして、ひとりでささやかな心祝いをした。

いつも親しくしている国道の「花の湯」のおばさんの所でお湯をいただき、話好きなおばさんのお相手をして話し込んでしまった。

七月七日の盧溝橋事件以来、すっかり心支度をして、荷物を梱包するばかりに支度して召集状がくるのを、準備していることなどを話した。

本部ではもう何コ班出勤した。八月二十八日には、同じ養成所で机を並べた日赤岩手班の同級生たちが召集された。それを聞く度に、興奮を押しひそめて、暗い日赤支部の倉庫に入って、黙々と救護材料のトランクなどを整備していた。

厚い木箱に収められた真新しい制服は、近い日に手を通すべき人を待って、ナフタリンの匂いを秘め、ひっそりと重ねられている。

花田ミキ著『語り継ぎたい-父母と船中記録』5-6p

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昭和十二年の九月九日、花田ミキさんの誕生日。その日に、花田さんは一本の電話を受け取ります。

続きはまた今度、書きます。

新町の「不二家」、国道の「花の湯」をネットで調べてみても見つからないです。どこにあったのだろう。図書館に聞けばわかるかしら。

:*゜..:。明日のために、昨日を語る :.::.*゜:.。:..:*゜

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