鳥の歌 El Cant dels Ocells

※動画は1971年10月24日、国連でのパブロ・カザルスさんのスピーチです。
弘前れんが倉庫美術館で行われている「りんご前線」展では、洋画家で女子美術大学名誉教授の佐野ぬいさんの作品が展示されています。佐野ぬいさんは、花田ミキさんと同じ青森県弘前高等女学校(現・青森県弘前中央高等学校)出身です。
展示スペースにはスクリーンがあり、佐野さんの人生を語る動画が流れています。
佐野さんがどのように戦争時代を過ごしたか、そして、戦争が終わって「色」を感じたこと。そのあとの東京やフランスの時代の話をされていました。
佐野さんの語りが終わり、エンドロールが映し出されたときに、流れた音楽がスペインのカタルーニャの民謡「鳥の歌 El Cant dels Ocells」でした。
「鳥の歌」は、カタルーニャ地方に生まれたチェロ奏者のパブロ・カザルス第二次世界大戦終結した1945年から演奏を始めたといわれています。この曲には、カタルーニャの文化に対して厳しい弾圧がなされ故郷への思慕と、平和の願いが結びついているといわれています。
1971年10月24日、カザルス94歳のときにニューヨーク国連本部において「私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は、ピース、ピース、ピースと鳴くのです」(peace、英語の平和)と語り、そのあと演奏したのが「鳥の歌」でした。
花田ミキさんのミキは木の幹をイメージして名づけられたと聞きました。木の幹に鳥がとまり、ピース、ピース、ピースと鳴くーピース(平和)が続くことは花田ミキさんが思い続けていたことです。佐野ぬいさんの展示を見ながら、花田ミキさんとパブロ・カザルスがつながった瞬間がありました。

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パブロ・カザルスさんスピーチの原文と日本語訳(国連本部、1971年10月24日)>
WORDS OF PAU CASALS AT THE UNITED NATIONS - 24 OCTOBER 1971
This is the greatest honour of my life. Peace has always been my greatest concern. I learnt to love it when I was but a child. When I was a boy, my mother - an exceptional, marvellous woman -, would talk to me about peace, because at that time there were also many wars. What is more, I am Catalan. Catalonia had the first democratic parliament, well before England did. And the first United Nations were in my country. At that time - the Eleventh Century - there was a meeting in Toluges - now France - to talk about peace, because in that epoch Catalans were already against, AGAINST war. That is why the United Nations, which works solely towards the peace ideal, is in my heart, because anything to do with peace goes straight to my heart.
I have not played the cello in public for many years, but I feel that the time has come to play again. I am going to play a melody from Catalan folklore: El cant dels ocells - The Song of the Birds. Birds sing when they are in the sky, they sing: "Peace, Peace, Peace", and it is a melody that Bach, Beethoven and all the greats would have admired and loved. What is more, it is born in the soul of my people, Catalonia.
パブロ・カザルス(国連本部、1971年10月24日)
このような機会をいただいたことは私の人生における最大の栄誉です。平和は常に私の最大の関心事でした。平和を愛することを学んだのは、私がまだ子どもの頃でした。母は素晴らしい女性でした。当時は多くの戦争があったため、母は、私に平和について話してくれました。
私はカタルーニャ人です。カタルーニャ州には、イギリスよりもずっと前に、初の民主的な議会がありました。そして、最初の国連は私の国にありました。当時(11世紀)、トルージュ(現在のフランス)で、平和について話し合う会議が開かれました。だからこそ、平和の理想を目指して活動している国連は、私の心の中にあるのです。
私は何年も人前でチェロを弾いていませんでしたが、再び演奏する時が来たと感じています。私が演奏するのは、カタルーニャの民謡のメロディーです。「El cant dels ocells-鳥の歌」です。
鳥は空を飛んでいるときに「ピース、ピース、ピース」と歌います。「ピース、ピース、ピース」と歌うのです。
バッハやベートーヴェンをはじめとする偉大な音楽家たちが賞賛し、愛したであろうメロディーです。さらに、それは私の民族、カタルーニャの魂の中で生まれたものでもあります。