「非常準備~日米開戦の日に~」鎮魂のうた

「婦長室の記録」に書かれていたものが病院船が襲撃され、患者もろとも看護師が海に投げ出されたとき寄ってくるサメをどうするかという議論の記録である。
【非常準備~日米開戦の日に~】
長きものひらめかしつつただよえばフカ来ぬといい布ととのえき
海は戦場だ。
一刻も油断がならない。
夜、十時に「非常準備」の命令が出た。
暑いのに、海中に入ることを考えて厚着をする。
メリヤスの下着、毛糸の腹巻、靴下も二重にはく。
救命胴衣やロープ、サメ対策のジャックナイフ、水筒の点検をする。
千人針もおなかに巻き、お守りも肌からはなさない。装備の点検がすみ演習は終わる。暑くてねつかれない。
「海に落ちたとき、乾パンなどを持つと魚が寄ってくるから持たないこと」
「サメが寄ってきたら、さしあたり、白衣のベルトを足首にゆわえて、サメの体長より長くすればいい」「水に入ったらできるだけみんなかたまって、負傷者を中に入れて励まし合うこと」などと話し合う。
便乗する兵たちが、広島を出発前に、長く赤い下帯をしめたが、フカよけのためとわかった。
※昭和十六年十二月八日(一九四一年)
~日米開戦の日-戦中の走りがきメモから
「婦長室の記録」より

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