東条艇が航く

東条艇がかたえを航くと乗員ら左舷に寄りて歓声をあげき
宇品港に、巡視のため、東条英機総理がくるというので、時の英雄を一目見ようと乗員は大さわぎした。
特徴のある眼鏡と、ヒゲの東条大将が、歓声に応えて挙手をしつつ、たちまち舷側を通りすぎた。
宇品港内に碇泊している、まばらな船影を見て、彼はどう思ったのであろう。
「鎮魂のうた」61p

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