~20世紀におくる~鎮魂のうた

藻のからむ身を投げし兵の病衣更え検視をしたる似島(ニノシマ)の浜
明日、患者が上陸するという前夜、宇品港に碇泊していた病院船から、投身した患者があった。
翌日、港内の似島浜で検視した。
ほかにもときに、病院船から投身する兵があった。
航海中に、投身をするかも知れないとおもわれる患者には、看護婦が、二十四時間ついて見守った。
神経を病む患者が多いときには、ひとときも気を抜けなかった。
その目を盗んで、故国の海に投身した兵がいたのである。故国の山をのぞみ、明日は上陸というのに、何を考えたのか?
白衣の姿で、故国に帰ることを恥じたのか、戦争の惨禍の中に身をおいて、消すことのできない思いに身を攻めたのか?
問いかけても、小波に現れたかばねは、何も語らなかった。
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平成14年(2002年)に花田ミキさんが自費出版した「~20世紀におくる~鎮魂のうた」という記録集があります。従軍看護婦として戦場に赴いたときの記録集です。
この経験から「命を阻むものはすべて悪」という強い信念を持つようになった経緯を感じていただけると幸いです。
戦地で負傷し、病院船で治療をしながら本土に戻った兵隊たち。つないだ命。二十四時間見守ったすきをぬって、本土上陸の前日に自ら断ってしまった兵隊の報告を受けた看護師の気持ちはいかばかりだったか…。
そしてこの似島は1945年8月6日の原爆投下後、多くの負傷者が運ばれた島となります。
新着報告には似島の写真も数枚載っています。ぜひご覧ください。

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