幸子さんへの手紙 世良啓さん

鎌倉幸子さん、おかげんいかがですか?腕の痛むなか、鎌倉さんが果敢にクラファンを立ち上げ、モーレツに突き進んでいく姿と、毎日届くメールに胸がいっぱいになっています。約束していた応援メッセージ、いくら長くてもいい、というリクエストにお応えして、今夜、新たに書き直してお送りすることにします。
鎌倉さんと、弘前高校の大先輩の五十嵐匠監督に初めてお会いしたのは2年前。古い一枚の東奥日報の記事を見せてくださいましたね。「2歳のとき私は偶然この花田ミキさんに命を救ってもらいました。どうしても花田さんの生涯を撮りたい、恩返しがしたい」と、五十嵐監督は少年のように瞳をキラキラさせて必死に語り「なんとか死ぬまでに、命の恩人の映画をとりたいんです。こんなコロナと戦争の中、日本はもちろん世界中の医療に携わる人を応援する映画をつくりたいんだ」と。
そのとき、この監督の描く「命の恩人」の映画を観てみたいと思いました。
実は監督と少し似た経験が、私にもあります。生後3ヶ月健診のとき、保健婦さんの言葉がきっかけで病気の発見につながり、早期に手術を受けられました。あれから今まで、どれだけたくさんの医療関係者の方々のお世話になってきたことか。無事に20才を越えて生きられ、結婚して、不安いっぱいの中で出産した時も、地域の保健婦さんたちが家まで何度か訪ね、励ましてくれました。思えば、いま私や私の子供たちがこの世にいられるのも、地域の保健婦さんや看護士さんやお医者さんたちのおかげなのです。その中には、きっと花田ミキさんのつくった看護学校で教育を受けた方やゆかりの方もいたはず。そう思うと、いてもたってもいられず、映画を応援することを決めました。

棟方志功太宰治高橋竹山寺山修司澤田教一などなど、青森はさまざまなジャンルに新たな地平を切り拓く鬼才の生まれる土地ですね。私が惹かれるのは、彼らがどんな逆風の中でも生身の弱い人間の立場に立ち、「NO WAR」を表現し続けたところです。時代の空気なんか読まず、時には常識に逆らいもする彼らには、共通して青森の濃い反骨の「じょっぱり」の血が流れてる。それは多かれ少なかれ、きっと私たち青森人みんなの中に流れる血なのでしょう。
「東のナイチンゲール」花田ミキもそのひとり。彼女のことは最初、東奥日報の連載で初めて知りました。青森県第一高等女学校(現:青森県弘前中央高校)を卒業して戦場を体験した花田ミキの一生が、敵も味方もなく「命を阻むものはみんな悪」という強い信念で貫かれているということを、丁寧な取材で描き出した心に残る連載でした。
確かに五十嵐監督や鎌倉さんがいうように、疫病と戦争の続く今だからこそ、彼女を映画化する意味があると思います。凶作の青森に生まれ、貧困や戦争ゆえに奪われる命をたくさん見てきた花田ミキ。彼女が生涯、いったいどれだけの命を救ったかはわかりませんが、でもまさかそのうちの1人の男の子が、無事に成長して世界の賞を受賞する映画監督となり、自分の伝記映画をつくるなんて、花田さん本人も夢にも思わなかったでしょう。
五十嵐匠監督の作品では、ドキュメンタリー映画「SAWADA~青森からベトナムピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死~」がやはり忘れられません。鎌倉さんも澤田教一のつながりで監督と出会ったというお話でしたよね。あの映画から27年、監督は再び青森の人間の映画を、青森の力を結集してつくろうとしているわけですが、その主演のミキを、青森出身のあの木野花さんが演じると聞いたときは思わず飛び上がりました!

なにしろ劇団青い鳥の「シンデレラ」を偶然テレビで観た大学生の時からの大ファンで・・・(と、この話は長くなるのでまたいつか)。とにかく、これが大好きな木野花さん初主演映画になる、というだけでどんなにうれしいか!(しかも花田ミキそっくり!!)
さらに昨年、青森市で上演された菊谷栄を描いた舞台「最後の伝令」で竹内俊吉役を好演した草野とおるさん、草野さんの木造高校時代の同窓生の舞の海さん、そして津軽弁ブームを巻き起こし続ける王林さんもご出演と、次々ニュースが入るたび、ああ応援してよかったと映画への期待もどんどんふくらみます。
時間はかかっていますが、いま、青森でも少しずつ少しずつ応援の輪が広がっていますよ。「アオモリ文藝」の皆さんや、映画「看護婦のオヤジがんばる」の原作者、八戸の藤田健次さんご夫妻はじめ、ひとり、またひとりと応援に加わってくださっています。こうして小さな応援の手がだんだんつながって、大きな渦になり、新しい青森の「命の映画」が生まれていくのですね。生きていることが楽しくなるような映画、命は奪うよりも助ける方がずっといいと思えるみんなの映画ができるといいですね。命を阻むものがみんな悪なら、命を守り育て、救うものたちはみんなよい。そんな映画ができて、国境を越えて届き、世界中みんなで同じ夢をみられたらいいなと思っているところです。

鎌倉さんはわが愛する弘前中央高校ご出身で、花田ミキさんの後輩ですが、いまやクラファン界のジャンヌ・ダルク、まるで令和の花田ミキです。どうぞ無理しないで、自分の腕をまずお大事に、と言ったって、ぜったい無理しちゃう気がするけれど、鎌倉さんはその無理さえぜんぶ世界平和のため、みたいなビッグスケールの夢を持っているから目が離せません。いつか弘前で上映会をする時には、「じょっぱり」はじめ青森の地酒をずらずらっと並べて一緒に乾杯しましょう! その日のためにも、この映画にたくさんの人の力と願いがどんどん集まりますように。応援しています!                                                 
世良啓
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世良啓さんから応援メッセージが届きました。
言葉にならないくらい感動しています。
クラウドファンディング、最後まで頑張る力をいただきました。感謝しかありません。
ありがとうございます!

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