珠江(シュコウ)をさかのぼる(広東)

底浅き江上トラックに傷兵のせ茘枝(レイン)のしげる珠江を下りき
広東の前垂れ姿の特務兵が橙(ダイダイ)持ちてはにかみつつ寄りき
広東には、珠江という河がある。
浅い河だから、大型の船は入れない。
船底の浅い江上トラックと呼ぶポンポン船でさかのぼった。
河岸には、茘枝の木がしげり、平和な風景ながら、広東は、おちて間もなくの戦場であった。
広東の波止場には、補給の物資が積まれ、それを運ぶ特務兵が、前垂姿で荷物運びをしていた。
そのうちのひとりが、江上トラックに寄ってきて、ニコニコしていた。
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平成14年(2002年)に花田ミキさんが自費出版した「~20世紀におくる~鎮魂のうた」という記録集があります。従軍看護婦として戦場に赴いたときの記録集です。
この経験から「命を阻むものはすべて悪」という強い信念を持つようになった経緯を感じていただけると幸いです。
従軍看護婦たちは、大きな病院船から時には小さな船に乗り移り、負傷兵の収容にあたりました。
しかしこの川には機雷が多く、小舟がそれにさわり爆発することも…。機雷についてはこの次の回の「広東野戦病院」でご紹介します。
今回、ボランティアの皆さまと文字起こしをさせていただきました。ご協力に感謝します。

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