へき地の医療

花田ミキさんは、盛岡赤十字看護婦養成所を経て、日本赤十字社青森県支部の看護婦となりました。戦争への召集の前は、看護婦として自然環境、生活環境が厳しいへき地を巡回していました。
青森県史の中に、戦時中である1942年7月11日 『月刊東奥 第4巻第7号』に書かれた青森県の妊婦と赤ちゃんについて書かれた記事があったので紹介します。
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生後一ケ年未満の死亡は、多くは早産によるもので、姙婦の過激な労働とふかい関係がある。早産にして然り、流産もその原因を尋ねれば、姙婦の不摂生な労働によるものが多くを占めてゐる。また農繁期の労働の乳幼児にあたへる影響についても、憂慮すべきものがある。ゆゑに農山漁村には育児施設を十分備へた託児所を多くつくり、共同炊事等により女性労働の緩和を図らなければならぬ――。
 ところで、姙産婦保健強化にはどんな方策をとつたらよいか。
 山形県医師会長平田善太郎氏の同地方における乳幼児愛育協会の活動やら、農繁期託児所の報告があつた後、岩手県小林茂雄氏が起つて、母子保護法、姙婦届出制度の強化を主張した。医師、産婆、保健婦が一体となつて全面的に奉仕しなければならぬ、と言ふのである。
姑教育 伝統日本食の吟味
 子供を多く生んで、多く殺すのが東北地方人口問題の特徴である。いろいろな原因があるうちで、もつとも大きなのは農村女性の過労と、栄養の不足だらう。農村は食糧配給を都会と同じにする必要はない。砂糖、肉の配給を都会より尠くしても、胎児に必要なビイタミンを含む塩魚の配給をもつと多くしなければならぬ。それから東北に於ける嫁と姑の関係も、乳幼児死亡率と無縁ではない。姑は家庭にあつて絶対的であり、衛生思想のない、ふるい因習にとらはれた姑のニラミが屢々嫁の流産、早産をなす素地をつくりあげてゐる。ゆゑに時代的な理想を一般大衆へ向つて啓蒙すべきである。
 農村の流産は五月、六月に多いのは、都会が冬期に多いのと対蹠的であるが、過激な労働を避けるために、託児所、共同炊事を積極的に行はねばならぬのはもちろん、戦時下防空訓練の際にも流産の多い事実に鑑み、その対策を講ずべきである(岩手県小林氏)との主張につづき、山形県青木永佐久氏は、同地方における姙婦登録制実施後の状況を報告した。
 八戸市加藤勝雄氏ふたたび起つて、死産、早産、流産の原因について興味ある統計を発表した。
 これによると、加藤氏が診査した八戸市の七百七十名の姙産婦のうち、死産四十五名、(内、労働に従事する者三十一名)、早産二十六名(内、漁業七名、農業労働十七名)、流産六十一名(農、漁業七名)である。
 さて、それではわれわれ東北地方民が、日常食べてゐる日本食の是非が問題になる。
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