「少年兵の声」鎮魂のうた

太ももを鱶に啖(ク)われし少年兵の母呼ぶ声が今によみがえる
「おかあさぁん、鱶がきたぁ」と日夜叫んでいた少年兵、背にはチャックのように大きく深い鱶の咬傷がついていた。神経症扱いであった。
少年まで戦線に立てたあの戦争。志願兵であったとはいえ志願することを学校も社会もあおったあの戦争。
耳についてはなれない少年のあの声は、「あの戦争の本質はなんだったのか?」と、今も迫ってやまない。
「鎮魂のうた」58p

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